抗生物質は薬局で市販されている?買えない理由と外用薬の選び方
急なケガや皮膚の炎症、喉の痛みや風邪の症状で、「早く治したいから抗生物質が欲しい!」と思ったことはありませんか?
病院に行く時間がない時、近くの薬局やドラッグストアでパッと抗生物質の飲み薬が買えたら、本当に便利ですよね。
でも、結論からお話しすると、飲み薬タイプの抗生物質は、実は日本の薬局では市販されていません。
なぜ市販されていないのか、そして、飲み薬の代わりになる市販薬や、市販で買える「唯一の抗生物質」について、筆者モモストアが詳しくお伝えしていきますね。
・抗生物質の内服薬が市販されていないのはなぜ?
・処方箋なしで買える「零売(れいばい)」でも抗生物質は手に入る?
・唯一市販で買える!抗生物質配合の「塗り薬」の選び方
・【化膿止め】市販の抗生物質配合軟膏おすすめ4選を徹底比較
- 飲み薬の抗生物質は薬局・ドラッグストアで買えません!
- 抗生物質の内服薬が市販されていないのはなぜ?
- 処方箋なしで買える「零売(れいばい)」でも抗生物質は手に入る?
- 唯一市販で買える!抗生物質配合の「塗り薬」の選び方
- 【化膿止め】市販の抗生物質配合軟膏おすすめ4選を徹底比較
- 「ものもらい」や「結膜炎」に効く市販の抗生物質入り目薬
- 抗生物質が効かない「ウイルス性の風邪」の市販薬対策
- 喉の痛みや腫れに抗生物質の代わりになる市販薬はある?
- 【膀胱炎や軽い感染症】抗生物質が必要になる前の市販薬と漢方
- 市販薬では治らない!すぐに病院に行くべき「危険な症状」
- 抗生物質を正しく使うために知っておきたい「耐性菌」の怖さ
- 病院で抗生物質をもらったら?正しい飲み方と注意点
- 抗生物質の購入場所を薬局以外で探すならオンライン診療も検討
飲み薬の抗生物質は薬局・ドラッグストアで買えません!

まず、一番気になっているであろう結論からお伝えします。
残念ながら、現在日本国内の薬局やドラッグストアでは、経口(飲み薬)の抗生物質を処方箋なしで購入することはできません。
これは、風邪薬や頭痛薬のように、誰でも自由に棚から手に取ってレジに持っていける「一般用医薬品(市販薬)」として、抗生物質が販売されていないためです。
なぜ抗生物質の飲み薬は市販薬として存在しないのか?
この質問は多くの方が抱く疑問ですよね。
抗生物質は、細菌の増殖を抑えたり、殺したりする作用を持つ、非常に強力な薬です。インフルエンザなどウイルスが原因の病気には全く効かず、細菌が原因の感染症にのみ効果を発揮します。
このような強力な作用を持つ薬だからこそ、安易な自己判断での使用は、ご自身の健康や、社会全体の健康にまで悪影響を及ぼす可能性があるため、国によって厳しく管理されているのです。
特に重要な理由として挙げられるのが、「抗生物質耐性菌」の問題です。
抗生物質を不必要に使ったり、途中で飲むのをやめてしまったりすると、体内に残った一部の細菌が薬に負けないように進化してしまいます。これが「耐性菌」と呼ばれる細菌です。
耐性菌が増えると、いざ本当に重い病気になったときに、どんな抗生物質を使っても効かない、という非常に危険な事態に陥ってしまいます。この問題は世界中で深刻化しており、厚生労働省も啓発活動に力を入れています。(詳しく知りたい方は厚生労働省の抗微生物薬耐性対策についてをご覧ください。)
このような背景から、抗生物質の飲み薬は、医師が診断し、細菌感染が確実な場合にのみ処方される「医療用医薬品」に分類されているのです。
市販薬にあるのは「抗菌作用」のある薬
では、薬局で「抗菌」と書かれた風邪薬や喉の薬を見かけることがありますが、これはどういうことなのでしょうか?
「抗生物質」と「抗菌作用のある薬」は、似ているようで実は違います。
抗生物質(Antibiotics)は、もともと微生物が作り出した、ほかの微生物の生育を阻害する物質を指し、現在では化学合成されたものも含めて特定の細菌に効く薬を指します。
一方、抗菌作用(Antibacterial)を持つ成分は、細菌の増殖を抑えたり、殺菌したりする作用を持つ幅広い化学物質の総称です。
市販薬に含まれる「抗菌」成分は、主に以下の目的で使われています。
- 喉や口腔内の消毒・殺菌(トローチやうがい薬)
- 傷口の殺菌・消毒(消毒液や軟膏)
- ニキビや化膿の原因菌を抑える(塗り薬)
これらの薬は、体の表面的な部分や局所的な細菌の増殖を抑えるのには役立ちますが、体内の深い部分で起きている重い感染症を治すための「抗生物質」とは作用の強さや範囲が全く異なります。
そのため、風邪などで抗生物質を飲みたいと思っても、市販の「抗菌」薬で代替できるわけではないことを理解しておきましょう。
抗生物質の内服薬が市販されていないのはなぜ?
「病院へ行くのが面倒」「常備薬として置いておきたい」という思いから、市販薬として抗生物質があれば良いのに、と考えるのは当然のことです。
しかし、先ほど触れた「耐性菌」の問題以外にも、内服薬の抗生物質が市販されない、守るべき重要な理由がいくつかあります。
薬の副作用とリスクの高さ
抗生物質は、その強力な作用ゆえに、副作用のリスクも市販薬と比べて高くなります。
特に注意が必要な副作用には、以下のようなものがあります。
| 主な副作用 | 内容 | 対策と注意点 |
| 下痢・軟便 | 腸内の善玉菌まで殺菌してしまうことで起こる。 | 整腸剤が一緒に処方されることが多い。自己判断で中止しないこと。 |
| アレルギー反応 | 発疹、かゆみ、重篤な場合はアナフィラキシーショック。 | 過去に抗生物質でアレルギーが出た場合は、必ず医師に伝える。 |
| 肝機能・腎機能障害 | 一部の薬で起こるリスクがあり、血液検査で確認が必要。 | 持病や服用中の薬は全て医師に伝えること。 |
これらのリスクを、薬の専門知識のない方が自己判断で管理するのは非常に困難です。
もし副作用が出たとしても、すぐに適切な対処ができなければ、命に関わる事態になりかねません。
副作用のリスクを避けるためにも、抗生物質は医師の正確な診断と処方、そして薬剤師による服薬指導のもとで使う必要があるのです。
病気の原因を見誤るリスク
抗生物質が必要な感染症かどうかを判断するのは、実は専門家にとっても難しいことです。
たとえば、「喉が痛い」という症状一つとっても、原因は多岐にわたります。
- ウイルス性咽頭炎(風邪の約8割):抗生物質は不要。
- 細菌性扁桃炎(溶連菌など):抗生物質が必要。
- 非感染性の炎症:抗生物質は不要。
もしウイルス性の風邪なのに「抗生物質を飲めば早く治るだろう」と市販薬として抗生物質を買って飲んでしまったらどうなるでしょう?
薬は効かない上に、体内の善玉菌を殺してしまい、耐性菌を生み出すリスクだけを負うことになります。
また、市販の抗生物質で症状が少し緩和されたように感じても、実は重い感染症が隠れていて、自己治療により発見が遅れてしまう「マスク効果」も危険です。
自己判断で使うことのデメリットが、利便性をはるかに上回るため、市販化は難しいのが現状です。
市販薬の分類と抗生物質の位置づけ
日本で販売されている医薬品には、リスクに応じて分類があります。(医薬品の適正使用推進のための情報を参照しながら読んでみてください)
一般用医薬品(市販薬)は、第1類、第2類、第3類と分かれていますが、抗生物質の飲み薬はこれらには含まれていません。
抗生物質のほとんどは、医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」に指定されています。
一部の医療用医薬品は、長い期間使われて安全性が確認された後に、市販薬へ移行する(スイッチOTC)制度がありますが、抗生物質の飲み薬については、耐性菌や副作用のリスクから、この制度の対象となることは非常に稀で、現時点では見送られています。
処方箋なしで買える「零売(れいばい)」でも抗生物質は手に入る?
最近、「零売薬局」という言葉を聞いたことはありませんか?
これは、病院を受診しなくても、医療用医薬品の一部を薬剤師の対面での説明を受けて購入できる薬局のことを指します。
忙しい現代人にとって、診察なしで薬が買えるというのは非常に魅力的ですよね。しかし、この零売という制度にも、抗生物質に関しては厳しい制限が設けられています。
零売で購入できる薬の範囲
零売の対象となる医療用医薬品は、厚生労働省によって厳しく定められています。
主に以下のような基準を満たす薬が対象です。
- 乱用や依存性が低い薬
- 副作用のリスクが比較的低く、短期的な使用にとどまる薬
- 主に慢性疾患で継続的な使用が想定される薬の一部(例外的に認められる場合がある)
具体的には、胃薬、一部の痛み止め、湿布薬、点眼薬、ビタミン剤などが零売の対象となることが多いです。病院で処方されることが多い薬であっても、零売薬局によっては取り扱いがある場合があります。
しかし、抗生物質の飲み薬は、その性質上、病気の診断や適応症の判断が不可欠であり、耐性菌のリスクも伴うため、零売の対象外とされています。
零売薬局で買える「抗生物質」は塗り薬と目薬のみ
零売薬局でも、実は「抗生物質」と名のつく薬を購入できるケースはあります。
ただし、それは内服薬(飲み薬)ではなく、外用薬(塗り薬、目薬など)に限定されます。
例えば、皮膚科で処方されることがある「ゲンタシン軟膏」や「リンデロンVG軟膏」などの、抗生物質やステロイドが配合された外用薬は、零売の対象となることがあります。
これらの外用薬は、体全体に作用する飲み薬と比べて、作用が局所的であるため、比較的リスクが低いと判断されるからです。
もし、処方箋がないけれど、「以前皮膚科でもらったあの塗り薬が欲しい」という場合は、お近くの零売薬局に問い合わせてみる価値はあります。
ただし、零売薬局で外用薬を購入する際も、薬剤師による適切な情報提供と、薬歴の管理が行われます。症状が悪化している場合や、初めて使う薬の場合は、やはり専門医の診察を受けるのが最も安全で確実な方法です。
零売を利用する上での注意点
零売は便利な制度ですが、利用にはいくつかの注意点があります。
- 購入できる薬が限られる:抗生物質の飲み薬は買えません。
- 全ての薬局で対応しているわけではない:零売は全ての薬局が行っているわけではありません。「零売薬局」と明記されているか、事前に確認が必要です。
- 薬剤師による対面販売が必須:インターネットでの販売は許可されていません。必ず薬局で薬剤師から説明を受けて購入する必要があります。
緊急時や軽症の場合に零売は役立ちますが、自己判断の限界を知り、特に抗生物質に関しては、「飲み薬は病院へ、塗り薬は症状によっては零売も検討」というスタンスでいるのが最も賢明です。
唯一市販で買える!抗生物質配合の「塗り薬」の選び方
飲み薬の抗生物質は買えないけれど、皮膚の軽い化膿や傷口の悪化を防ぎたい!というニーズは多いですよね。
ご安心ください。先ほどもお伝えしたように、抗生物質が配合された塗り薬や目薬は、市販薬として薬局やドラッグストアで購入できます。
これらは「化膿止め」として販売されており、とびひ、めんちょう、軽い火傷による化膿、傷口の二次感染の予防などに使われます。
抗生物質配合の塗り薬の主な成分
市販の化膿止め軟膏に含まれる抗生物質には、主に以下のような種類があり、それぞれ細菌の増殖を抑える働きをします。
| 成分名 | 特徴・作用 | 主な商品名(市販薬) |
| フラジオマイシン硫酸塩 | 広い抗菌スペクトルを持つ抗生物質。グラム陽性・陰性の両方の細菌に効果的。 | ドルマイシン軟膏、ドルマイコーチ軟膏など |
| バシトラシン | グラム陽性菌を中心に抗菌作用を発揮。フラジオマイシンと組み合わせて使われることが多い。 | ドルマイシン軟膏、ドルマイコーチ軟膏など |
| オキシテトラサイクリン塩酸塩 | テトラサイクリン系の抗生物質。広い抗菌スペクトルを持つ。 | テラマイシン軟膏a、テラ・コートリル軟膏aなど |
| クロラムフェニコール | 細菌のタンパク質合成を阻害して抗菌作用を発揮。 | クロマイ-N軟膏、クロロマイセチン軟膏2%Aなど |
これらの抗生物質単独で配合されているものもあれば、さらに効果を高めるために他の成分と組み合わせて配合されているものもあります。
選ぶときのポイントは「ステロイドの有無」
市販の抗生物質配合軟膏を選ぶ際、最も重要な判断基準の一つが、「ステロイド」が含まれているかどうかです。
ステロイドが含まれていないタイプ(抗生物質単独または抗真菌薬などと併用)
- 適している症状:軽い切り傷や擦り傷、やけどなどによる「化膿の予防・治療」が主目的の場合。湿疹や炎症を伴わない、純粋な細菌感染による化膿性皮膚疾患(めんちょう、毛のう炎など)の初期。
- メリット:赤ちゃんやデリケートな部位にも比較的使いやすい(ただし用法用量を確認)。
- 注意点:炎症や赤み、かゆみが強い場合は、抗炎症作用がないため効き目が弱いと感じることがあります。
ステロイドが配合されているタイプ(抗生物質+ステロイド)
- 適している症状:化膿を伴う湿疹、皮膚炎、かぶれなど、炎症や赤み、かゆみが強い場合。炎症を抑えつつ、細菌の二次感染を防ぎたい時に有効。
- メリット:ステロイドの強力な抗炎症作用により、炎症を素早く鎮めることができる。
- 注意点:ステロイドが入っているため、症状が改善したらすぐに使用をやめること。また、水虫やカンジダなどの真菌(カビ)が原因の感染症には使えません。
症状に応じて、炎症が主なのか、化膿が主なのかを見極めて選ぶことが、市販薬を効果的に使うための鍵となります。判断に迷ったら、必ず薬剤師や登録販売者に相談してくださいね。
【化膿止め】市販の抗生物質配合軟膏おすすめ4選を徹底比較
ここからは、実際に薬局やドラッグストアでよく見かける、代表的な抗生物質配合軟膏をいくつかご紹介します。どの薬を選ぶか迷った時の参考にしてください。
ドルマイシン軟膏(ゼリア新薬)
成分と特徴
ドルマイシン軟膏は、抗生物質である「バシトラシン」と「フラジオマイシン硫酸塩」の2種類が配合されています。この二つの抗生物質が幅広い細菌に対して協力して作用し、傷や火傷などによる化膿を予防・治療します。
ステロイドは入っていませんので、「化膿止めだけが欲しい」「炎症はあまりない」という場合に適しています。
油性の軟膏基材で傷口をしっかり保護する効果もあります。
こんな人におすすめ
- ステロイドを使いたくない方や、小さなお子様の軽い化膿止めとして。
- 軽い擦り傷、切り傷、火傷の化膿予防。
- とびひ(初期の軽いもの)、めんちょう、毛のう炎の治療。
クロマイ-N軟膏(第一三共ヘルスケア)
成分と特徴
クロマイ-N軟膏は、抗生物質の「クロラムフェニコール」と、抗真菌薬(カビを抑える薬)の「ナイスタチン」が配合されています。
特徴的なのは、抗生物質だけでなく、真菌(カンジダなど)による感染も同時にケアできる点です。これにより、単なる細菌感染だけでなく、真菌と細菌の混合感染の疑いがある場合や、抗生物質を使い続けた結果、皮膚にカビが生えてしまうのを防ぐ目的でも使われます。
こちらもステロイドは入っていません。
こんな人におすすめ
- 細菌と真菌の両方の感染が疑われる皮膚疾患。
- デコルテや背中などの「化膿した赤いブツブツ」の原因菌を抑えたい方。
テラ・コートリル軟膏a(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
成分と特徴
テラ・コートリル軟膏aは、抗生物質である「オキシテトラサイクリン塩酸塩」と、ステロイド成分の「ヒドロコルチゾン」が配合されています。
ヒドロコルチゾンは、市販薬の中でも作用が比較的穏やかな「ウィーク(弱い)」ランクのステロイドです。
そのため、化膿に加え、赤み、かゆみ、炎症といった症状が伴う湿疹や皮膚炎に効果的です。抗生物質で化膿を抑えつつ、ステロイドで炎症を鎮める、というWの効果が期待できます。
こんな人におすすめ
- 炎症(赤み・かゆみ)がひどく、なおかつ化膿も伴っている湿疹。
- 市販薬で早く炎症を鎮めたいが、強すぎるステロイドは避けたい方。
フルコートf(田辺三菱製薬)
成分と特徴
フルコートfは、抗生物質として「フラジオマイシン硫酸塩」、そしてステロイドとして「フルオシノロンアセトニド」が配合されています。
このステロイドは市販薬の中では「ストロング(強い)」ランクに分類されており、テラ・コートリルaよりも強力に炎症を抑えることができます。そのため、特に症状がひどい、つらい湿疹や皮膚炎、とびひなどに使われます。
短期間で効果を出したい場合に非常に有効ですが、ステロイドの強さから、顔など皮膚の薄いデリケートな部位への使用は慎重に行う必要があります。
こんな人におすすめ
- なかなか治らない、かゆみや赤みが強い重度の皮膚炎。
- とびひなど、細菌感染による化膿が広範囲に及んでいる場合。
※塗り薬はあくまで局所のケアです。熱が出たり、リンパ節が腫れたりなど全身症状が出た場合は、すぐに内服薬が必要となる可能性が高いため、病院を受診してくださいね。(市販薬の成分や使用上の注意をよく読んでから使ってください)
「ものもらい」や「結膜炎」に効く市販の抗生物質入り目薬
皮膚の化膿だけでなく、目の周りのトラブルでも抗生物質が必要になることがあります。
よくあるのが、細菌感染による「ものもらい(麦粒腫)」や「結膜炎」です。
これらの目の感染症の治療薬として、抗生物質が配合された点眼薬や眼軟膏も、市販薬として購入することができます。
市販の抗菌目薬の主な成分
市販の抗菌目薬に含まれる抗生物質には、主に以下の成分があります。
- スルファメトキサゾール:サルファ剤という種類の抗菌成分で、ものもらいや結膜炎の原因菌に対して広く効果を発揮します。
- フラジオマイシン硫酸塩:塗り薬でも使われる抗生物質で、目の周りの化膿にも使われます。
市販の目薬は、これらの抗生物質に加えて、目の炎症を抑える成分(グリチルリチン酸二カリウムなど)や、目の充血を取る成分(血管収縮剤)などが複合的に配合されていることが多いです。
抗菌目薬を選ぶ際の注意点
目のトラブルは、原因を特定することが非常に重要です。
H3:細菌感染かウイルス感染かを見極める
ものもらいや結膜炎の原因は、細菌感染のほかにウイルス感染の可能性もあります。
特にウイルス性の結膜炎(はやり目)は、抗生物質は全く効きません。
ウイルス性の結膜炎は、非常に感染力が強く、目やにが多く出て、目の充血や異物感が強くなることが多いです。抗生物質の目薬を点し続けても症状が悪化する場合は、すぐに眼科を受診してください。
H3:ステロイド配合の有無にも注意が必要
目の炎症を抑えるために、一部の眼軟膏や点眼薬にはステロイドが配合されているものもあります。
目のステロイドは、眼圧を上げてしまうなどの副作用(緑内障のリスク)があるため、自己判断で長期間使用するのは危険です。
市販の抗菌目薬は、一般的にステロイドが入っていないものが多いですが、眼軟膏を選ぶ際や、病院で処方された薬を使い続ける際は、必ずステロイドの有無を確認し、薬剤師や医師の指示に従って使用してください。
目の症状は進行が早いことも多いので、「とりあえず市販薬」は数日間に留め、改善が見られない場合は迷わず専門医(眼科)を訪れることが、目を守るために最も大切な行動です。
抗生物質が効かない「ウイルス性の風邪」の市販薬対策
多くの方が抗生物質を求めるとき、その原因となっているのが「風邪」です。
しかし、風邪の約8割は、インフルエンザウイルスやライノウイルスなどの「ウイルス」が原因であり、抗生物質は全く効果がありません。ウイルスに抗生物質を使っても効かないどころか、先に説明した耐性菌のリスクだけを高めてしまいます。
抗生物質が必要になる風邪とは?
では、どんな時に風邪で抗生物質が必要になるのでしょうか?
それは、ウイルスによって体力が低下したところに、細菌が二次感染を起こした場合です。
典型的な例としては、
- 風邪の症状が長引き、痰や鼻水が黄色や緑色に変化した(細菌性の炎症の可能性)
- 激しい喉の痛みが続き、高熱を伴う(溶連菌などの細菌性扁桃炎の可能性)
- 中耳炎や副鼻腔炎を併発し、耳の痛みや顔面の痛みがひどい(細菌感染の可能性)
このような症状が出た場合は、医師の診察が必要です。自己判断せずに、適切な抗生物質の処方を受けてください。
ウイルス性の風邪を早く治すための市販薬戦略
抗生物質が効かないウイルス性の風邪は、結局のところ、ご自身の免疫力でウイルスを排除するしかありません。
市販薬の役割は、「症状を緩和し、体が休息しやすい環境を整えること」です。
| 症状 | 市販薬の主な成分・役割 | おすすめの市販薬の例 |
| 発熱・頭痛 | イブプロフェン、アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分) | イブ、バファリン、タイレノールなど |
| 喉の痛み・腫れ | トラネキサム酸、イブプロフェン(抗炎症成分) | ペラックT錠、ルルアタックEXなど |
| 鼻水・鼻づまり | 抗ヒスタミン薬、プソイドエフェドリン(鼻炎成分) | パブロン鼻炎カプセルSαなど |
| 咳 | デキストロメトルファン、ジヒドロコデイン(鎮咳成分) | アネトンせき止めZ液など |
特に喉の痛みには、次に詳しく解説するトラネキサム酸配合の薬が、抗炎症作用により症状緩和に役立つため、多くの方に選ばれています。
風邪を引いたときは、無理をせず、暖かくして、水分と栄養をしっかり摂ることが一番の薬ですよ。(市販の抗炎症薬の選び方を参考にすると良いでしょう。)
喉の痛みや腫れに抗生物質の代わりになる市販薬はある?
風邪で最もつらい症状の一つが、飲み込むのもつらいほどの喉の痛みです。
この「喉の痛み」に対して、抗生物質のようにピンポイントで細菌を攻撃する薬は市販されていませんが、炎症を鎮め、痛みを和らげることで、つらさを劇的に改善できる市販薬はたくさんあります。
喉の痛み対策の主力「トラネキサム酸」
喉の痛みに特化した市販薬で、近年注目されているのが「トラネキサム酸」です。
これは抗炎症成分の一つで、喉の粘膜で炎症を引き起こす物質(プラスミン)の働きを抑える作用があります。
抗生物質ではありませんが、炎症による喉の腫れや痛みを内側から緩和してくれるため、「抗生物質が欲しい」と感じるほどのつらい症状に役立ちます。
トラネキサム酸は、以下のような症状を持つ方におすすめです。
- 喉が真っ赤に腫れている方
- 声枯れや、扁桃腺の腫れが気になる方
- 市販の痛み止めでは喉の痛みが治まらない方
ただし、トラネキサム酸は止血作用もあるため、血栓症(脳梗塞、心筋梗塞など)の既往歴がある方は、使用前に必ず薬剤師に相談してください。
喉の細菌を殺菌・消毒する「トローチ」や「うがい薬」
喉の表面に付着した細菌やウイルスを直接攻撃するためには、局所作用のある薬が有効です。
これも抗生物質ではありませんが、症状の悪化を防ぐために役立ちます。
| 剤形 | 主な成分 | 特徴と使い方 |
| トローチ・ドロップ | デカリニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)など | 口の中でゆっくり溶かし、成分を長時間患部に留まらせて殺菌・消毒します。 |
| うがい薬 | ポビドンヨード(ヨウ素)、アズレンスルホン酸ナトリウムなど | ポビドンヨードは強力な殺菌作用、アズレンは粘膜の炎症を鎮める作用があります。 |
| スプレー | ヨウ素、アズレンスルホン酸ナトリウムなど | 喉の奥の炎症部位に直接薬液を噴射できます。 |
喉の痛みのピークは通常、風邪の引き始めから3日間程度です。
この期間は、トラネキサム酸などの飲み薬で炎症を抑えつつ、トローチやうがい薬で喉の清潔を保ち、喉の粘膜を守ってあげることが、早期回復への一番の近道となります。
【膀胱炎や軽い感染症】抗生物質が必要になる前の市販薬と漢方
細菌感染が原因となる病気は、風邪だけではありません。特に女性に多い「膀胱炎」は、急な頻尿や排尿時痛といったつらい症状が出ます。
これも本来は抗生物質が必要な病気ですが、「初期の軽い症状なら、まずは市販薬で様子を見たい」という方もいらっしゃるでしょう。
膀胱炎の症状緩和を目的とした市販薬や漢方薬は存在しますが、これらは抗生物質ではありません。あくまで「抗生物質が必要になる前に試せる選択肢」としてお話しします。
市販の漢方薬「五淋散(ごりんさん)」と「猪苓湯(ちょれいとう)」
膀胱炎の症状緩和に使われる漢方薬として、代表的なのが「五淋散」と「猪苓湯」です。
- 五淋散:排尿時の痛みや残尿感、頻尿など、泌尿器系の諸症状に対して使われます。炎症を抑え、老廃物や熱を取り除く作用があるとされます。市販薬としては「ボーコレン」などが知られています。
- 猪苓湯:排尿の異常や、尿量が少ない、のどが渇くといった症状に用いられます。体の水分バランスを整え、膀胱の炎症を改善する作用があるとされます。
これらの漢方薬は、初期の軽い症状や、再発予防のために服用されることがありますが、抗生物質のように原因菌を直接殺す作用はありません。
症状が改善しない場合や、血尿が出た場合、発熱を伴う場合は、腎盂腎炎など重症化している可能性があるため、すぐに泌尿器科を受診し、適切な抗生物質の処方を受けてください。
軽い口内炎やニキビ対策
日常的な軽い感染症としては、口内炎やニキビも挙げられます。
これらも細菌が関与していることがありますが、内服の抗生物質なしで対処可能です。
| 症状 | 市販薬の成分・対策 | 抗生物質との関係 |
| 口内炎 | ステロイド(トリアムシノロンアセトニド)、アズレンなど | 主に炎症を抑える。細菌感染を伴う場合は、外用薬の抗生物質が使われることもあるが、基本的には炎症ケア。 |
| ニキビ(軽いもの) | イオウ、レゾルシン、サリチル酸など(アクネ菌を殺菌・角質ケア) | ニキビの原因菌(アクネ菌)を殺菌する成分が配合されている。皮膚科では内服・外用の抗生物質が使われる。 |
ニキビの市販薬は、アクネ菌の増殖を抑える「抗菌成分」を配合していますが、これも内服の抗生物質とは違います。
市販薬でセルフケアできるのは「軽い症状」までと覚えておきましょう。
市販薬では治らない!すぐに病院に行くべき「危険な症状」
ここまでの話で、「抗生物質の飲み薬は市販で買えない」ということがお分かりいただけたと思います。
自己判断で市販薬を使い続けると、かえって病気の発見が遅れてしまうリスクもあります。
もしご自身の体調に以下のような症状が出たら、迷わず、「今すぐ病院へ行くべきサイン」だと認識してください。
全身に影響が出ているサイン
細菌感染が局所的なものではなく、血液を通じて全身に広がり始めている可能性がある、非常に危険なサインです。
- 高熱が続く(38.5℃以上):特に悪寒や震えを伴う場合、重度の感染症(敗血症、腎盂腎炎など)の可能性があります。
- 激しい頭痛と嘔吐:髄膜炎などの重篤な中枢神経系の感染症のサインかもしれません。
- リンパ節の腫れがひどい:首、脇、股などのリンパ節が硬く腫れ上がり、痛みを伴う場合、体内で強い細菌と免疫が戦っている証拠です。
- 意識が朦朧とする、呼吸が苦しい:重症化しており、緊急対応が必要です。
局所でも危険性が高いサイン
感染部位が限られていても、その進行度合いや部位によって危険度が変わります。
- 皮膚の赤みが急速に広がる(蜂窩織炎など):皮膚の深い部分で細菌感染が起こっている可能性があります。赤みが熱を持ち、境界がはっきりしている場合は危険です。
- 強い腹痛と発熱:急性虫垂炎(盲腸)や憩室炎など、腹腔内の細菌感染の可能性があります。
- 血尿や背中の痛みがある:膀胱炎から腎盂腎炎へ移行している可能性があり、腎臓の機能に影響が出る前に治療が必要です。
- 顔のデリケートな部位の化膿:目の周りや鼻の付け根など、脳に近い部分の化膿は、感染が広がると重篤な事態になりやすいため注意が必要です。
モモストアの経験上、市販薬で対処できるのは、あくまで「軽度の局所的な炎症」や「初期の風邪症状」までです。
少しでも「おかしい」「いつもと違う」と感じたら、無理せず医療機関を受診することが、結果的に最も早く、安全に治すための賢い選択ですよ。
特に、症状が始まってから48時間(丸2日)経っても改善の兆しが見えない場合は、自己判断を中断し、医師の診断を仰ぎましょう。
抗生物質を正しく使うために知っておきたい「耐性菌」の怖さ
「抗生物質が市販されない最大の理由」として、何度も出てきているのが「抗生物質耐性菌(AMR)」の問題です。
これは、私たち一人ひとりの行動が、未来の医療に影響を与える、非常に重要な社会問題です。私たちモモストアも、この問題についてしっかりとお伝えしたいと思っています。
耐性菌はなぜ生まれるのか?
細菌はもともと、生き残るために進化する能力を持っています。
抗生物質を使うと、その薬に弱い細菌は死滅しますが、ごく稀に薬が効かない「変異した細菌」が生き残ります。これが耐性菌の元です。
そして、抗生物質を不適切に使うことで、この耐性菌がより増殖しやすい環境を作ってしまいます。
| 耐性菌が生まれる不適切な使用例 | なぜそれが危険なのか |
| 風邪などウイルス性の病気に抗生物質を飲む | 全く効果がないのに、体内の善玉菌と弱い細菌だけを殺し、耐性菌が生き残りやすくなる。 |
| 症状が良くなったからと途中で服用をやめる | 完全に殺しきれなかった「最もしぶとい細菌(=耐性菌になりかけの菌)」だけが生き残り、増殖して真の耐性菌になる。 |
| 人からもらった抗生物質を飲む | 症状や原因菌が異なるため、効かない可能性が高く、耐性菌を作るだけになる。 |
これらの行動一つ一つが、薬が効かない「スーパー耐性菌」を生み出す原因となってしまうのです。
もしあなたが今、抗生物質を飲んでいるなら、「すべて飲み切る」ということが、未来の自分のため、そして他の誰かのためにもなる、最も重要な行動だと覚えておいてください。
私たちにできる「AMR対策」
私たち一人ひとりができるAMR対策は、決して難しいことではありません。
- 抗生物質は医師から処方された時だけ飲む
- 医師や薬剤師に「本当に抗生物質が必要ですか?」と尋ねてみる
- 処方された抗生物質は、症状が良くなっても必ず最後まで飲み切る
- 手洗い、うがい、ワクチン接種などで、そもそも感染症にかからないように予防する
特に、医師に「これはウイルス性の風邪なので抗生物質は必要ありません」と言われたら、納得して受け入れることが大切です。
「出してもらえなかった」と不満に思うのではなく、「抗生物質を無駄遣いせずに済んだ」と安心してくださいね。(WHOの抗生物質耐性に関する情報も参考になります)
病院で抗生物質をもらったら?正しい飲み方と注意点
細菌感染と診断され、ついに抗生物質が処方された!という時、これを最大限に活用し、かつ耐性菌を作らないようにするための正しい飲み方と注意点をお話しします。
実は、自己判断で服用方法を変えてしまうと、効果が激減したり、副作用が出やすくなったりする可能性があります。
処方箋の指示は絶対!3つの重要ポイント
抗生物質を飲む上で、最も守るべきルールは以下の3点です。
H3:とにかく「飲み忘れず、決められた期間最後まで」飲み切る
これが最も重要です。症状が良くなると「もう治ったから」と自己判断で飲むのをやめてしまう方がいますが、これは絶対にNGです。
体内でまだ生き残っている弱い細菌を完全に撲滅するためには、薬の血液中濃度を一定に保つ必要があります。
もし途中でやめてしまうと、生き残ったしぶとい細菌だけが猛威を振るい、病気が再発したり、最悪の場合、その細菌が「耐性菌」となってしまうのです。
処方された日数が5日分なら5日分、7日分なら7日分、必ず飲み切ってください。
H3:飲む「時間間隔」を守る
抗生物質は、薬の種類によって「1日1回」「1日2回(12時間ごと)」「1日3回(8時間ごと)」など、飲む回数と時間が決められています。
特に「1日2回」や「1日3回」の場合は、薬と薬の間隔を一定に保つことが、薬の効果を最大化するために非常に重要です。
例えば、「朝食後、昼食後、夕食後」と指示があっても、朝と昼の間隔が短すぎると、夕方には血中濃度が下がりすぎてしまい、細菌を殺しきれない時間帯ができてしまいます。
薬剤師から「朝8時、夕方4時、夜12時」など、具体的な時間指導があった場合は、それに従うようにしましょう。
H3:一緒に飲む「食べ物や飲み物」に注意
抗生物質の中には、特定の飲み物や食べ物と一緒に摂ると、吸収が悪くなり、効果が落ちてしまうものがあります。
- 牛乳、乳製品:テトラサイクリン系やニューキノロン系の抗生物質は、カルシウムと結合して吸収されにくくなることがあります。
- アルコール:薬の分解を妨げたり、副作用を強めたりする可能性があります。抗生物質を服用中は、飲酒は控えてください。
- 特定のサプリメント:鉄剤やマグネシウムなどのミネラルを含むサプリメントも、薬の吸収を妨げることがあります。
これらの注意点も、薬剤師から必ず説明がありますので、「普段飲んでいるサプリや健康食品」も含めて、隠さずに全て伝えることが、安全かつ効果的に治療を進めるための秘訣です。
抗生物質の購入場所を薬局以外で探すならオンライン診療も検討
「仕事が忙しくて病院の診療時間に間に合わない」「感染症の疑いがあるから、他の患者さんと接触したくない」という理由で、なかなか病院へ行けない方も多いでしょう。
飲み薬の抗生物質は市販されていませんが、「薬局以外で処方箋をもらう方法」として、近年急速に普及しているオンライン診療があります。
オンライン診療で抗生物質は処方してもらえる?
結論から言うと、オンライン診療でも抗生物質は処方してもらえます。
ただし、対面診療と同様に、医師が患者さんの症状を診察し、細菌感染の可能性が高いと判断した場合に限ります。
オンライン診療のメリットは、自宅や職場からスマートフォンやパソコンを通じて診察を受けられる点です。
特に、風邪の初期症状や、慢性的な皮膚疾患の悪化など、医師が視覚的に判断しやすい症状であれば、オンライン診療は非常に有効です。
オンライン診療の流れと注意点
オンライン診療から抗生物質の処方を受けるまでの一般的な流れは以下のようになります。
- オンライン診療アプリやウェブサイトで予約を取る。
- 診察時間になったら、ビデオ通話で医師の診察を受ける。(症状や経過を正確に伝えることが重要です)
- 医師が処方箋を発行する。
- 処方箋を希望の薬局へ送ってもらう。(オンライン服薬指導に対応した薬局を選ぶと、薬の受け取りも自宅で完結できます)
- 薬が郵送または指定薬局で受け取り、薬剤師から服薬指導を受ける。
【注意点】
- 重症の場合は対象外:激しい呼吸困難や高熱など、緊急性の高い重症な症状の場合は、オンラインではなく、すぐに救急外来や対面診療が必須です。
- 検査ができない:血液検査や培養検査など、細菌の種類を特定するための検査ができないため、医師が抗生物質の種類を決めかねる場合があります。
- 薬剤師との連携:薬を受け取る際に、必ず薬剤師からの「オンライン服薬指導」を受ける必要があります。
病院へ行く時間がないけれど、どう考えても抗生物質が必要そうだ、という場合は、まずはオンライン診療が可能な医療機関を探してみるのが、最も現実的で安全な方法です。
これで、抗生物質の飲み薬は市販されていない理由から、代わりに使える市販薬、そしていざという時の対策まで、一通りご理解いただけたかと思います。
抗生物質は、使うべき時に正しく使うことで、その力を最大限に発揮します。
適切な知識と判断力をもって、ご自身の健康を守ってくださいね。モモストアが応援しています!

